大きなあんみつに、ほのぼのしたおばあちゃんと子どもの表紙。
今回は絵本ではなく児童書。
認知症のおばあちゃん(エツコさん)と小学生たちをめぐる、ちょっと不思議なものがたり。
ころさんブログらしく、お話に出てくる食べ物に注目してご紹介します。
絵本の紹介と違って、「え~、それは先に言わんといてくれよ~」という、いわゆる「ネタバレ」に注意ですね。
いやあ、でも多少そうなるよなあ…う~ん、なるべくサラッとご紹介します。
あらすじ『エツコさん』【小学校高学年から】
エツコさん
著: 昼田 弥子
絵: 光用千春
出版社: アリス館
発行日: 2022年12月27日
ISBN: 9784752010210
200ページ
『エツコさん』は、認知症のおばあちゃん「エツコさん」を描く、6つの短編集です。
それぞれの短編に出てくる食べ物と、簡単なあらすじです。
1 迷子
このお話に出てくる食べ物…どら焼き・アジフライ
お友達とケンカ別れのまま、引っ越してしまった6年1組の樹(たつき)。
新しい学校の友達と遊ぶ約束をしたが、道に迷う。
道を尋ねようと声をかけたおばあちゃん。
あ、このおばあちゃん…
前にコンビニでどら焼きを買おうとして、うまくお金を出せなかったおばあちゃんだ。
「エツコ先生」と呼ばれていた。
お母さんが晩ごはんのアジフライにレモンをしぼりながら、認知症だと言っていたっけ。
「エツコ先生」はどんどん歩いて案内してくれるけれど、あれ?なんか変。
――――たどり着いた先は、見慣れたアパート。樹の中にチクチクするあの日の記憶がよみがえります。
2 雨やどり
このお話に出てくる食べ物…ヤクルト・ホットケーキ
6年生の明里(あかり)が帰ってくると、妹の日菜(ひな)が認知症の中村さん(エツコさん)とヤクルトを飲んでいる。
中村さん(エツコさん)は、4年位前まで交通安全のボランティアをしていた。
よく声をかけてくれる中村さん(エツコさん)に、そのころ保育園に通っていた妹はよく懐いている。
明里はそれをどこかあきれて眺めていた。
今日は、今にも雨が降りそうな中、来るはずのない電車を待っている中村さん(エツコさん)を連れて帰ってきたのだと言う。
「いっしょにホットケーキをつくろう」と誘ってみたり、宿題を教えてもらったり、妹はとてもうれしそうだ。
名前を間違って呼ばれているけれど。
――――はしゃいでいる二人を見ているうちに、明里は不思議な感覚にとらわれます。
3 お守り
このお話に出てくる食べ物…水ようかん・お茶
航平は6年3組の中村さんの帰りの会が終わるのを待っている。
中村さんのおばあちゃんの名前が書いてあるお守りを拾ったから。
せっかく待っていたけれど、渡しそびれてしまった。
去年、同じクラスの女子から無視されたことから、航平は女子が苦手。
月曜の朝に下駄箱に入れておくしかないか…
悩みながら昼寝をしていると、おじいさんが夢に出てきた。
お守りを家に届けてほしいという。
――――この後、気味悪く思った航平が、お守りを届けに行くのですが、そこで、おやつに出してもらったのが、水ようかんと熱いお茶。
おばあちゃん(エツコさん)と二人きりになってしまった航平は、ちょっとしたハプニングに見舞われます。
4 きいろいやま
このお話に出てくる食べ物…ミント味のガム・板チョコ
友達がいない6年3組の勇人(ゆうと)は、かかさず日記をつけている。
けれど、2年前の8月のある日のページだけは真っ白で、何も思い出せない。
2年前にあおぞら公園で出会ったオオノさん。
周りはオオノさんを不審者だという。
2人はぽつぽつと言葉を交わし、少しずつ心を通わすようになっていた。
好きな食べ物、嫌いな食べ物、仕事の話、お父さんに殴られた話…
でもある日、オオノさんはいなくなった。
そこにあったのはボロボロのオオカミのぬいぐるみ。
ぬいぐるみを見つめていると、ふとそばに立っていたおばあさん、エツコさんだ。
――――オオノさんとの交流の中で出てくるのが、ミント味のガムと板チョコ。
空白のページの日、いったい何があったのでしょうか。
5 エツコさん
このお話に出てくる食べ物…あんみつ
小学校の先生をしていたエツコさん。
エツコさんは認知症で、先生をしていた頃や、ずっと昔の子どもの頃と、おばあちゃんである現在の世界を行ったり来たり。
庭掃除をしていたエツコさんは、ふいにあんみつが食べたい気分に。
出かける時は声をかけるように言われているけれど、コンビニはすぐ近くだから。
ところが、どんなに歩いてもたどり着かない。
そうこうしているうちに、エツコさんは先生だったころのエツコ先生に…。
――――認知症であるエツコさんの目線で、認知症の不思議な世界を描いた一遍です。
6 記憶
このお話に出てくる食べ物…あんパン・クリームパン
中学1年生になった中村真名(まな)。
真名のおばあちゃん(エツコさん)が認知症になったのは、真名が小学校2年生くらいのころ。
今日、真名はおばあちゃんと散歩に出かけた。
あおぞら公園にパンの移動販売がきている。
真名はおばあちゃんをベンチに待たせ、おばあちゃんにはあんパン、自分にはクリームパンを買う。
戻ってくると、おばあちゃんはぼんやりとうつろな感じに。
隣に座った真名の前に、小さな男の子と犬。
この子も今日のことをすっかり忘れてしまうのだろうか。
おばあちゃんの記憶も…
――――エツコさんの孫、真名の目線から、認知症の家族の気持ちが描かれているお話です。
レビュー『エツコさん』
『エツコさん』は、元教師で今は認知症のエツコさんをめぐるお話。
6篇のうち4篇は、それぞれに悩みを抱える小学生たちとエツコさんのものがたり。
少し不思議な世界観が印象的です。
認知症のもやもやとした世界に入り込んでしまう感じでしょうか。
5篇目の『エツコさん』では、認知症であるエツコさん自身の目線で、6篇目は、孫である真名の視点から家族の気持ちが綴られています。
認知症という、描き方によっては思いテーマですが、どれも心温まるお話です。
作者 昼田弥子(ひるた みつこ)さんについて
1984年岡山県生まれ。子どもの本専門店メリーゴーランド主催の童話塾で学ぶ。
昼田弥子ホームページ(https://hirutamitsuko.amebaownd.com/)より
『あさって町のフミオくん』(ブロンズ新社)で第52回日本児童文学者協会新人賞を受賞。
その他の作品に『コトノハ町はきょうもヘンテコ』(光村図書)、『エツコさん』(アリス館)、
『ほんとはスイカ』(ブロンズ新社)、『かぜがつよいひ』(くもん出版)等がある。
デビュー作は『ほんとはスイカ』(2015)という絵本です。
言葉遊びのナンセンス絵本だそうです。
未読ですがおもしろそうです。
ほんとはスイカ
文: 昼田 弥子
絵: 高畠 那生
出版社: ブロンズ新社
発行日: 2015年05月25日
ISBN: 9784893096036
175×220mm
32ページ
今月新刊絵本が出版されたそうです。
ふふふ…すごい勢いの表紙ですね。
こちらも「ナンセンスしりとり絵本」だそうです。
言葉遊びが得意な方なのですね。
かぜがつよいひ
作: 昼田 弥子
絵: シゲリ カツヒコ
出版社: くもん出版
発行日: 2023年03月10日
ISBN: 9784774329277
266mm×218mm
32ページ
絵 光用千春(みつもち ちはる)さんについて
1986年神奈川県生まれ。漫画家・イラストレーター。2009年『こどものころから』が第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員推薦作品に選出される。作品に『コスモス』(イースト・プレス)、『たまご』(小学館)などがある。
『エツコさん』(アリス館)奥付より
挿絵の他にマンガを描かれている方なんですね。
絵本ナビでもマンガ作品が検索に上がってきました。
まとめ
今回は、認知症のおばあちゃん、エツコさんをとりまく温かいストーリー『エツコさん』を、食べ物に着目してご紹介しました。
認知症の当事者の目線が描かれているのが印象的でした。
私の祖母も晩年は認知症でしたが、ちょっと思い出しました。
おばあちゃんもこんな気持ちだったのかなぁ。
ではまた。
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