もう恋愛ものの小説なんて読めないと思ってました。
40半ば、既婚、子ありの私にとって恋愛なんて完全に他人事。
無縁過ぎて基本的に恋愛ものは避けていました。
だけどこの小説はちょっと違う。
恋愛がストーリーの主軸なのだけれど、「恋愛小説」っていう感じじゃないんですね。
「食」を通じて生きていくこと描き出す感じ。
とくに登場する女性たちの生き方。
悩んで、選んで、そして前を向いて歩んでいく。
すべての女性におすすめしたい一冊です。
『さんかく』千早茜 はこんな本 | あらすじ&レビュー
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あらすじ
恋愛はもういいという、自営業デザイナーの高村さん(30代後半)。
高村さんとかつてバイト先が一緒だった、営業職の伊東くん(31歳)。
伊東くんの恋人で、大学院で動物の研究に明け暮れている華(28歳)。
伊東くんは、高村さんが暮らす古い京町家で同居することに。
微妙な距離間の居心地のいい生活。
共に味わう滋味あふれる食事。
この同居を恋人華に言い出せずにいる伊東くん。
「三角関係」と言えるほど激しくはない。
けれど、3人の気持ちは揺れ動く。
レビュー
この物語では、食べるシーンがとても印象的です。
3人それぞれの視点で切り替わりながら進められるストーリー。
それぞれがどのように「食べること」と関わるかで、三人三様の価値観が描き出されます。
作中に出てくる食べ物の描写はとても細やかで、料理シーンがあるものなどは再現可能なほど。
実際に食べてみたことはなくとも、高村さんが料理した、あるいは選んだものはとてもおいしい。
読んでいて食べたくなった私は、実際に一つ作ってみました。
それはまた後ほど別の記事にまとめたいと思います。
追記↓↓↓
塩昆布キャベツ | 千早茜『さんかく』に出てくる料理を再現してみました
***
ともあれこの3人の恋愛模様。
先述したように他人様の恋愛事になどさほど興味がない私。
けれどこの物語はちょっと違う。それはなんだろう。
それは登場する女性たちの生き方ではないか。
2人ともしっかりと自分で悩み、選択し、歩んでいる。
そうやってこれまでも生きてきたであろう二人には強さがあり、その姿はすがすがしい。
「私の人生は私が選ぶ。」
そんな意志が感じられる物語でした。
著者 千早茜(ちはやあかね)さんについて
1979年生まれ。(私と同い年だ!)
2008年『魚神』で第21回小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。
その後数々の作品で、受賞したり、候補になったり。
2023年、『しろがねの葉』で第168回直木三十五賞受賞。
千早茜さんのお父様は病理学を専門とする獣医師なのだそうで、その辺がこの小説中の華のキャラクターに影響しているかもしれないですね。
そのお父様の仕事の関係で、ご自身も小学校1年生から4年生までをアフリカ・ザンビアで過ごし、アメリカンスクールに通っていたそうです。
今、エッセイ『わるい食べもの』を読んでいますが、関連するエピソードも登場します。
私はこの本が初千早茜さんだったので、直木賞受賞の『しろがねの葉』は未読。
直木賞受賞作家ですもんね。実力はお墨付きというわけですね。
近々読んでみたいと思います。
最近Xでは『グリフィスの傷』や『ひきなみ』のポストもよく上がっているので、そちらも気になります。
まとめ
ぽつんぽつんと描かれた、表紙の食べ物たち。
かわいらしい表紙だと思って手に取ったけれど、読み終わってから見てみると、まるで3人の距離感を表しているような、絶妙なデザインなんだなあと思います。
食べ物が出てくる小説を好んでよく読みますが、こんなにもしっかり食べ物が描かれ、その上ストーリーや、心理描写がありありと表現されているなんて、いい小説に出会ったなあと思います。
余談ですが、この小説を読んでいるとき、佐々木倫子さんのマンガ『動物のお医者さん』(私にとっては懐かしの!)も読んでいたんですが、この小説の中の華の動物の解剖をするエピソードと被ったりして、「おおっ!」となりました。
いい作家さんに出会えて、読みたい本がまた増えました。
ゆっくり味わっていきたいと思います。
ではまた。
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