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『さんかく』千早茜 | 食べること、生きること。私の人生は私が選ぶ。

さんかく 小説・エッセイ

もう恋愛ものの小説なんて読めないと思ってました。

40半ば、既婚、子ありの私にとって恋愛なんて完全に他人事。

無縁過ぎて基本的に恋愛ものは避けていました。

だけどこの小説はちょっと違う。

恋愛がストーリーの主軸なのだけれど、「恋愛小説」っていう感じじゃないんですね。

「食」を通じて生きていくこと描き出す感じ。

とくに登場する女性たちの生き方

悩んで、選んで、そして前を向いて歩んでいく。

すべての女性におすすめしたい一冊です。

『さんかく』千早茜 はこんな本 | あらすじ&レビュー

『さんかく』千早茜
発売日:2023年10月12日
著者/編集:千早茜(著)
出版社:祥伝社
発行形態:文庫
ISBN:9784396350147

※画像は楽天ブックスにリンクを貼っています。Amazon、Yahoo!の方は記事の一番下にリンクあります。

あらすじ

恋愛はもういいという、自営業デザイナーの高村さん(30代後半)。
高村さんとかつてバイト先が一緒だった、営業職の伊東くん(31歳)。
伊東くんの恋人で、大学院で動物の研究に明け暮れている(28歳)。

伊東くんは、高村さんが暮らす古い京町家で同居することに。
微妙な距離間の居心地のいい生活。
共に味わう滋味あふれる食事。
この同居を恋人に言い出せずにいる伊東くん

「三角関係」と言えるほど激しくはない。
けれど、3人の気持ちは揺れ動く。

レビュー

この物語では、食べるシーンがとても印象的です。

3人それぞれの視点で切り替わりながら進められるストーリー。

それぞれがどのように「食べること」と関わるかで、三人三様の価値観が描き出されます

作中に出てくる食べ物の描写はとても細やかで、料理シーンがあるものなどは再現可能なほど。

実際に食べてみたことはなくとも、高村さんが料理した、あるいは選んだものはとてもおいしい。

読んでいて食べたくなった私は、実際に一つ作ってみました。

それはまた後ほど別の記事にまとめたいと思います。

追記↓↓↓
塩昆布キャベツ | 千早茜『さんかく』に出てくる料理を再現してみました

***

ともあれこの3人の恋愛模様。

先述したように他人様の恋愛事になどさほど興味がない私。

けれどこの物語はちょっと違う。それはなんだろう。

それは登場する女性たちの生き方ではないか。

2人ともしっかりと自分で悩み、選択し、歩んでいる

そうやってこれまでも生きてきたであろう二人には強さがあり、その姿はすがすがしい

「私の人生は私が選ぶ。」

そんな意志が感じられる物語でした。

著者 千早茜(ちはやあかね)さんについて

1979年生まれ。(私と同い年だ!)

2008年『魚神』第21回小説すばる新人賞を受賞し、作家デビュー。

その後数々の作品で、受賞したり、候補になったり。

2023年、『しろがねの葉』第168回直木三十五賞受賞

千早茜さんのお父様は病理学を専門とする獣医師なのだそうで、その辺がこの小説中の華のキャラクターに影響しているかもしれないですね。

そのお父様の仕事の関係で、ご自身も小学校1年生から4年生までをアフリカ・ザンビアで過ごし、アメリカンスクールに通っていたそうです。

今、エッセイ『わるい食べもの』を読んでいますが、関連するエピソードも登場します。

私はこの本が初千早茜さんだったので、直木賞受賞の『しろがねの葉』は未読。

直木賞受賞作家ですもんね。実力はお墨付きというわけですね。

近々読んでみたいと思います。

最近Xでは『グリフィスの傷』『ひきなみ』のポストもよく上がっているので、そちらも気になります。

まとめ

ぽつんぽつんと描かれた、表紙の食べ物たち。

かわいらしい表紙だと思って手に取ったけれど、読み終わってから見てみると、まるで3人の距離感を表しているような、絶妙なデザインなんだなあと思います。

食べ物が出てくる小説を好んでよく読みますが、こんなにもしっかり食べ物が描かれ、その上ストーリーや、心理描写がありありと表現されているなんて、いい小説に出会ったなあと思います。

余談ですが、この小説を読んでいるとき、佐々木倫子さんのマンガ『動物のお医者さん』(私にとっては懐かしの!)も読んでいたんですが、この小説の中の華の動物の解剖をするエピソードと被ったりして、「おおっ!」となりました。

いい作家さんに出会えて、読みたい本がまた増えました。

ゆっくり味わっていきたいと思います。

ではまた。

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