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『いちじくのはなし』しおたに まみこ|うそかまことか…キッチンのエンターテインメント!

絵本・児童書

独特の空気をかもし出す『たまごのはなし』。

その第2弾が出版されています。

舞台はあのキッチン。

今回は強烈な個性を持ったいちじくが登場。

『たまごのはなし』のあのたまごとマシュマロも出てきますよ。

あらすじ『いちじくのはなし』【小学校低学年から 大人も】

いちじくのはなし
作: しおたに まみこ
出版社: ブロンズ新社
発行日: 2023年02月16日
ISBN: 9784893097156
210mm×148mm 
48ページ

キッチンを散歩していたら、おはなし会の張り紙を見つけます。

たまごとマシュマロは、おはなしを聞きに行ってみることにしました。

おはなしを会するのはいちじく。

おはなしは以下の3話に分かれています。

ぼうけんのはじまり

おはなし会の会場は大賑わい。

さあ、おはなし会が始まります。

いちじくのおはなしはこんなお話。

自分探しの旅をしていた若いいちじくが、小さな町にたどり着く。

ところがこの町、様子がおかしい。

大きなハエが果物たちを追いかけまわしているせいだという。

いちじくは甘いみつで罠を仕掛け、まんまとハエを縛り上げた。

捕まえられたハエは(あっさりと)降伏し、「なんと立派ないちじく」と感服、もう果物を追いかけまわすのはやめ、ぶんぶん飛ばすにひらひら飛ぶことも約束した。

ことの顛末を王様に報告すると、王様はいちじくの背中に勲章をはりつけた。

そして王様はいちじくを見込んで、「オレンジのなみだ」を見つけ出してほしいと依頼する。

おはなし会が終わると、ハッカあめが、いちじくの背中に貼ってある勲章に気づきます。

「ほんものの えいゆうだ!」

おはなしはキッチンの観客たちをとりこにしたようです。

オレンジの なみだ

次の日のおはなし会は、海の冒険物語。

一人前になったいちじくは、オレンジのなみだを探す海の旅をしている。

そこに流れてきたライムが、いちじくに助けを請う。

かんきつ島がレモンの海賊にとられてしまったのだという。

かんきつ島では、レモンたちが威張り散らしている。

いちじくが「いますぐ いばるのを やめなさい」というと(あっさりと)レモンたちはいばるのをやめはじめた。

レモンの中の一人に目をつけたいちじくは「オレンジのなみだをもっていますね」と問う。

すると、レモンは「あんたは すごいやつだ」と感服し、(これまたあっさりと)オレンジのなみだを返した。

こうしていちじくはかんきつ島を去るが、風が止み船が進まなくなってしまった。

我慢できなくなったいちじくが、オレンジのなみだをペロリとなめるとすっかり元気に。

しかしはずみでオレンジのなみだは海の中へ。

海はみるみるオレンジジュースにかわり、おおきな渦が船ごと飲み込んでしまった。

キッチンで おきたこと

いちじくがたどり着いたのは伝説の場所、「キッチン」。

そこで助けてくれたクッキーに相談を受ける。

突然落ちてきたのびるわっかを、キッチンのみんなが独り占めしたくて争っているのだという。

とうとうわっかはバチンと切れてしまった。

いちじくはそれを切り刻んで、小さなわっかをたくさん作った。

それぞれのわっかを手にしたみんなは大喜び。

めでたしめでたし。

「キッチンって ここのこと?」

全部ほらばなしだったってっこと!?

観客席にどよめきが。

いちじくはこう言い放ちます。

「このはなしが うそか まことか。

そんなことは ささいなことです。

それよりも、おはなしをきいて あなたがたの こころが はずんだか。

だいじなのは そこなのです!」

レビュー『いちじくのはなし』

全くもって、うさんくさいいちじく。

キッチンをざわつかせる存在です。

ふだん何にもしない時間をぼんやり過ごしている、キッチンの仲間たち。

いちじくは、キッチンに新たな楽しみを運び込んできたことに相違ありません。

エンターテインメントってなんだろう?芸術ってどう楽しむ?

そんなことを考えさせられる一冊です。

あらすじでちょっと内容を言い過ぎかなとも思いますが、でもこの絵本のすごいところは空気感。

これは、実際に絵本を読んでみないと伝わらないところです。

いちじくのドアップのカット、昔テレビで放送されていたアニメ『笑ゥせぇるすまん』の喪黒福造をちょっと思い出しました。

「ドーン!!!!」「オーッホッホッホッホッ…」って。

作者 しおたに まみこさんについて

しおたに まみこ(しおたにまみこ)
1987年、千葉県生まれ。女子美術大学工芸学科卒業。はじめて制作した絵本『やねうらおばけ』で、2014年第15回ピンポイント絵本コンペ優秀賞を受賞し、絵本作家となる。繊細な鉛筆画で描き出す独特の世界が、読者を引きつける。初の絵童話作品となる『たまごのはなし』(ブロンズ新社)で、第28回ブラチスラバ世界絵本原画展金牌、第27回日本絵本賞大賞他多くの賞を受賞。作品に『そらからきたこいし』、『やねうらべやのおばけ』、『さかなくん』(以上偕成社)などがある。三人姉妹の末っ子。きれいな石と昆布が好き。好きな果物は柑橘類。東京都在住。

『いちじくのはなし』カバー裏より

今回もまたクセのあるキャラクターが登場でしたね。

たまごとマシュマロもなかなかのクセでしたが。

こんなキャラクターを生み出すしおたにまみこさんって、いったいどんな方なんだろう。

「昆布が好き」か…好きなものに昆布とは、あまりないことのような気がします。

この辺がひょっとして、しおたにまみこさんのキャラクターを表しているのかな、というような気がします。

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まとめ

今回は前回に引き続き、しおたにまみこさんの作品『いちじくのはなし』をご紹介しました。

深みのある内容、独特のちょっと毒のある世界観。

大人のファンも多いのではないでしょうか。

わたしも大好きな作家さんです。

まだ読んでいない作品もあるので、今後も追っていきたいと思います。

食べ物絵本を中心にご紹介している当ブログ、この絵本は食べ物だらけにもかかわらず、「おいしそう~」とはならないですね(笑)

ではまた。

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