Xを眺めていると、おいしそうな表紙の読了ポストが流れてきました。
シンプルな背景に、とろとろ玉子っぽいのがのったお茶碗。
「『湯気を食べる』か…。ああ、あれかな、蒸し料理の話かな。せいろ流行ってるっぽいしな。」
蒸し料理の話にしては、それっぽくない料理の表紙なんですが、「湯気は蒸し料理やろ」って思い込み。
そんないい加減な認識でこのエッセイを手に取りました。
おいしそうな表紙絵に弱い私です。
結果、せいろの話ではなく、もう少し話題広めの食エッセイだったのですが(偶然にもせいろの話も一話あります!)、これがとっても素敵なエッセイだったんです。
食べることが好き、料理も好きな方ですよ、っていう食いしんぼうな方には、めっちゃ共感の多い一冊だと思います。
食エッセイとかはジャケ買いでも割と間違いないんじゃないでしょうか。
それでは、レビューです。
エッセイ『湯気を食べる』レビュー
※画像は楽天ブックスにリンクを貼っています。Amazon、Yahoo!の方は記事の一番下にリンクあります。
『湯気を食べる』は、雑誌「オレンジページ」に連載されている、くどうれいんさんの食にまつわるエッセイです。
一話目は、本のタイトルにもなっている「湯気を食べる」。
著者が学生の頃の、ご飯が出来上がるよりちょっと早めの「ごはーん」というお母さんの呼びかけ。
当時は理解していなかった、出来立てを食べさせたい母の気持ちに思いをはせて綴られています。
そして、今、「えらい人よりも、湯気を立てた料理のほうがえらい」という、くどうさんの食に対する誠実さも感じさせる一話です。
料理の出来上がりよりちょっと早めに呼びかけるその気持ち、おいしいものをおいしいタイミングで食べたいという気持ちにも「うんうん」とうなづきながら読みました。
この本の中には、すいかのサラダ、菊のおひたし、生わかめと鰤のしゃぶしゃぶ…食べたこともない、そして食べてみたいお料理がつぎつぎと出てきます。
いろいろなお料理を食べて作って、食べるものや食べることに対して、しっかりとこだわりを持っていらっしゃる、くどうれいんさん。
たくさんの食の経験を積まれてきたこの感じ、私より少し年上の50代くらいだろうか、と思って読んでいたんですが、なんとくどうれいんさんはまだ30歳!
ええ~っ!お若い!!
30歳でこんなにもいろんなものを食して、工夫していらっしゃるなんて!
やはりなみなみならぬ食いしんぼうに違いない!と確信しました。
おしゃれな食べ物もたくさん出てきますが、嫌味なく、かわいらしいお人柄がにじみ出るようなエッセイです。
時折出てくるダンナさまのエピソードにも、仲良しだなあとほっこりしました。
著者 くどうれいん さんについて
くどうれいんさんは1994年生まれ、現在30歳の女性作家です。
岩手県盛岡市出身在住で、地元ではラジオやテレビでもご活躍されているようです。
今回読んだのはエッセイですが、エッセイだけでなく小説や短歌、絵本など、ジャンルを問わず広く作品を発表されています。
代表作は、第165回芥川賞候補作となった小説『氷柱の声』、エッセイ『わたしを空腹にしないほうがいい』『虎のたましい人魚の涙』『桃を煮るひと』、歌集『水中で口笛』など。
本名は「工藤玲音」で、短歌ではこちらの名前を長く使われていたようですが、2024年2月「くどうれいん」とひらがなの表記に統一されたようです。
たまご丼を作ってみました
「私もそれ食べてみたい!」と思うものがたくさん出てくるこのエッセイ。
早速、一番すぐできそうなものを作ってみました。
それが表紙絵にもなっている「たまご丼」。
これは、くどうさんが忙しい時に作る、サッと作ってサッと食べられる一品だそうです。
作り方はこうです。本文より引用します。
必要なものは白飯と卵とサラダ油とごま油とお醤油。冷凍ご飯をチンしている間に茶碗を用意して、そこで卵を溶く。卵はほんとうは一個でいいのだけれど、仕事がうまく進まずにむしゃくしゃしているような日は二個でもよい(ただしその場合はご飯も多めに用意したほうがいい)。
卵は白身がざっと切れていればそこまで細かく溶く必要はない。小さめのフライパンに(ちょっと多かったかな)と思うくらいのサラダ油を入れて、そこに(あーあ)と思うくらいのごま油を足す。最初から強火にして、どう考えても熱くなったな、と思うくらいまで熱する。そこに卵液を素早く加える。じゅわ! と思ったより大きな音が鳴って、ごま油の香りが立ってくるから慌てて換気扇のスイッチを入れる。
みるみる卵に火が通るから、熱された油を卵に通すように、丸い輪郭を切って大きく二、三度菜箸で混ぜて火を止める。もうちょっと火を通したいなと思うくらいで触るのをやめて、卵液の残っている茶碗に温まったご飯を盛る。そこにフライパンで熱された油ごと、たまごをのせる。ほんの数十秒余熱が入っただけでたまごは完璧な半熟になり、油で濡れてぎらぎらと光っている。そのたまごの上にお醤油をしっかり回しかける。だし醤油でも最高だけれど、あくまでたまごとお醤油だけ。葱だの鰹節だの、余計な飾りをのせたりはしない。ほかほかの白飯に、油でてらてらになった半熟のたまご、そこにお醤油。それだけ。それだけなのがわたしにとって至高のたまご丼である。いそいで食卓へ持って行って、大口ではふはふと食らいつくのがいい。
そうして、できあがったのがこちらです。

いかがでしょうか。けっこう表紙絵の感じにできたと自画自賛。
やってみると想像より一瞬で火が通り、あっという間に出来上がります。
お味はシンプルに玉子と醤油。そして、ごま油がよく効いています。
忙しくてもちゃんと食べたい!そんな一品ですね。
そんなに忙しいわけではない私は、ついつい、ネギやもみのりをのせよかな~なんて思っちゃいます。
うん、これ、時間があるならいくらでもアレンジできそう。
アレンジしすぎて親子丼になっちゃいそうです。
まとめ
今回は、くどうれいんさんのエッセイ『湯気を食べる』のレビューでした。
最近はコーヒーのレビューが多かったのですが、あまりにもかわいらしくて素敵なエッセイだったので、ブログに書いておきたくなりました。
この本はレシピ本ではなく、あくまでもエッセイなんですが、まねしてみたいお料理がいっぱい。
一人暮らしを始める姪っ子に当てたメッセージは、お料理を無理なくワンランク上のものにする薬味やトッピングの知恵が詰まっていて、まず押さえておきたいところです。
パンをリベイクするかわりに蒸すっていうのもやってみたい。
うなづきながら、あるいはクスリと笑って、あっという間に読み終わってしまう一冊でした。
くどうれいんさん、初めて読んだのですが、これまで出版されたものもいろいろ読んでみたいと思います。
ではまた。
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